「西向きの部屋って、やめたほうがいいのかな…」。住まい探しをしていると、不動産屋さんから「西向きはちょっと…」と遠回しに言われたり、ネットの口コミで「西向きはやめとけ」なんて言葉を見かけたりして、急に不安になりますよね。
何を隠そう、私自身もかつて東京の西向きワンルームに住んでいた頃、夏の午後に帰宅したときの、あのむわっとした熱気と床のじんわりとした熱さは今でも忘れられません。ジリジリと照りつける太陽に、思わず「うっ…」と声が漏れたことも一度や二度ではありませんでした。
でも、本当に西向きは「悪」なのでしょうか?この記事では、後悔する理由から意外なメリット、そして快適に住むための具体的な対策まで、私の失敗談も交えながら徹底的に解説していきます。
- 「西向きはやめとけ」と言われる5つの理由
- デメリットだけじゃない!西向き物件の意外なメリット4選
- 【診断】あなたはどっち?西向き物件が向いている人・向いていない人
- 後悔しないための西向き物件・暑さ対策5選
- まとめ:「西向きはやめとけ」は万人に当てはまるわけではない
「西向きはやめとけ」と言われる5つの理由
多くの人が「西向きはやめとけ」と口を揃えるのには、やはり明確な理由が存在します。特に日本の気候を考えると、無視できないデメリットがいくつかあるのは事実。まずは、なぜ西向きが敬遠されがちなのか、その代表的な5つの理由を具体的に見ていきましょう。
理由①:夏の午後はサウナ状態?耐え難い暑さ
西向きの住まいで最も懸念されるのが、夏の午後の強烈な暑さです。太陽の位置が低くなる午後から日没にかけて、部屋の奥まで一直線に日差しが差し込み、室温がぐんぐん上昇します。
実のところ、気象庁のデータを見ても、一日の最高気温が記録されるのは午後2時から3時にかけてが最も多いのです。この時間帯に直射日光を浴び続ける西向きの部屋は、まさに天然のサウナ状態になりかねません。
私が以前住んでいた部屋では、8月の晴れた日に外出先から帰ると、室温が35℃を超えていることも珍しくありませんでした。エアコンを最強モードでつけても、壁や床に蓄えられた熱がなかなか冷めず、快適な温度になるまで時間がかかってしまうのです。この「帰宅後の灼熱地獄」は、電気代の高騰にも直結するため、お財布にも厳しいと言えるでしょう。
理由②:目が開けられないほどの強烈な西日
午後の西日は、単に暑いだけではありません。太陽の角度が低いため、非常に眩しく感じられます。窓際にデスクを置いて作業をしようものなら、パソコンの画面に光が反射して目がチカチカしたり、眩しさで集中できなかったりすることも。
「ちょっと眩しいな」というレベルではなく、カーテンを閉めなければテレビ鑑賞もままならないほどの強烈さです。せっかくの休日、家でゆっくり過ごしたいのに、日差しが気になってリラックスできない…なんてことになったら、少し悲しいですよね。
理由③:大切な家具や床が日焼けで劣化する
強い日差しは、人間だけでなく、私たちの暮らしを彩る家具や床、本などにもダメージを与えます。特に紫外線は、木製家具の変色やフローリングの色褪せ、布製品の劣化を早める原因となります。
影響を受けるもの |
劣化の具体例 |
フローリング |
色褪せ、ひび割れ、ささくれ |
家具(木製) |
変色、塗装の剥がれ、乾燥による反り |
カーテン・ソファ |
色褪せ、生地の劣化による破れ |
本・ポスター |
紙の黄ばみ、インクの退色 |
お気に入りのデザイナーズソファや、大切にしている無垢材のテーブルが、知らぬ間に日焼けでまだら模様になってしまったら…想像するだけでショックですよね。西向きの部屋では、こうした「モノの日焼け」に対する配慮が不可欠になります。
理由④:冬の午前中は寒く、朝起きるのが辛い
夏の暑さが注目されがちな西向きですが、実は冬の午前中の寒さもデメリットの一つです。東向きや南向きの部屋が朝日を浴びて自然と暖かくなるのに対し、西向きの部屋は午前中にほとんど日が当たりません。
そのため、冬の朝は室温が上がりにくく、ひんやりとした空気の中で目覚めることになります。暖房をつけなければ、ベッドから出るのが億劫に感じられるかもしれません。朝の時間を大切にしたい人や、寒さが苦手な人にとっては、この「朝の寒さ」が毎日の小さなストレスになる可能性があります。
理由⑤:将来、売却や賃貸で不利になる可能性
これは持ち家を検討している場合に特に重要なポイントです。一般的に、日本では日当たりの良い南向きが最も人気が高く、次いで東向き、西向き、北向きの順で好まれる傾向があります。
つまり、将来的にその物件を売却したり、賃貸に出したりすることを考えた場合、西向きであるという点が、他の条件が同じ南向きの物件に比べて不利に働く可能性があるのです。査定額が低めになったり、借り手が見つかりにくかったりするリスクは、ゼロではないと心に留めておく必要があるでしょう。
デメリットだけじゃない!西向き物件の意外なメリット4選
さて、ここまで聞くと「やっぱり西向きはダメだ…」と思ってしまうかもしれません。でも、少し待ってください。物事には必ず裏と表があるもの。西向き物件には、デメリットを補って余りある、意外なメリットも存在するのです。
メリット①:家賃や物件価格が相場より安い
これは非常に大きなメリットです。先ほど述べたように、日本では南向きが最も人気のため、西向きの物件は同じ建物内や同じエリアの類似物件と比較して、家賃や販売価格が低めに設定されていることが少なくありません。
例えば、都内の同じマンションで、同じ間取りの部屋があったとします。
- 南向きの部屋の家賃: 150,000円
- 西向きの部屋の家賃: 145,000円
このように、月々5,000円の差が出たとすると、年間で60,000円、2年間住めば120,000円もお得になります。この差額を家具や家電の購入費用に充てたり、趣味や旅行に使ったりできると考えれば、かなり魅力的ではないでしょうか。初期費用を抑えたい、あるいは少しでもお得に住みたいと考える人にとって、西向きは賢い選択肢となり得ます。
メリット②:冬は午後からポカポカで暖かい
夏の暑さの原因となる西日は、冬になると一転して「天然の暖房」というありがたい存在に変わります。冬の午後は、部屋の奥まで暖かい日差しが差し込み、室温を心地よく保ってくれます。
日中、暖房をつけなくてもポカポカと暖かく過ごせるため、光熱費の節約につながるという声も多く聞かれます。寒いのが苦手な人にとっては、午後の日だまりで読書をしたり、うたた寝をしたりするのは至福の時間になるでしょう。
メリット③:夜型のライフスタイルの人には快適
もしあなたが、朝はゆっくり寝ていたい、活動の中心は午後から夜にかけて、という夜型のライフスタイルなら、西向きの部屋はむしろ快適かもしれません。
東向きの部屋のように、早朝から強烈な朝日が差し込んで無理やり起こされる、ということがありません。午前中は比較的暗く静かな環境で、ゆっくりと睡眠をとることができます。そして、活動を始める午後からは明るい日差しが差し込み、一日を気持ちよくスタートできるでしょう。
メリット④:美しい夕焼けを眺められる特権
これは、西向きの部屋に住む人だけが享受できる、何にも代えがたい特権です。空がオレンジ色から深い紫色へと刻一刻と表情を変えていく様子を、自宅の窓から毎日眺めることができます。
仕事で疲れて帰ってきたとき、ふと窓の外に広がる美しい夕焼けが目に入ったら、それだけで心が癒されるような気がしませんか?ベランダに椅子を置いて、お茶を飲みながらサンセットタイムを過ごす…なんて、とても贅沢な時間の使い方です。季節や天気によって毎日違う表情を見せる空は、きっとあなたの日々に彩りを与えてくれるでしょう。
【診断】あなたはどっち?西向き物件が向いている人・向いていない人
ここまでメリットとデメリットを見てきましたが、結局のところ、西向き物件が合うか合わないかは、あなたのライフスタイルや価値観次第です。ここで一度、自分はどちらのタイプかチェックしてみましょう。
西向きが「おすすめな人」のチェックリスト
以下の項目に3つ以上当てはまるなら、あなたは西向き物件と相性が良いかもしれません。
- [ ] 朝はゆっくり寝ていたい、朝日は苦手だ
- [ ] 仕事などで日中はほとんど家にいない
- [ ] とにかく家賃や物件価格を抑えたい
- [ ] 寒がりで、冬は暖かく過ごしたい
- [ ] 窓からの景色、特に夕焼けを楽しみたい
- [ ] 夏の暑さ対策を工夫するのが苦ではない
- [ ] 洗濯物は午後から夕方にかけて干すことが多い
西向きを「やめとけ」と言える人のチェックリスト
逆に、こちらの項目に3つ以上当てはまる場合は、西向き物件を選ぶと後悔する可能性が高いでしょう。「西向きはやめとけ」という言葉は、あなたにとっては真実かもしれません。
- [ ] 暑いのがとにかく苦手で、夏は涼しく過ごしたい
- [ ] 在宅ワークなどで日中も家で過ごす時間が多い
- [ ] 朝日を浴びてスッキリ目覚めたい
- [ ] 大切な家具や本を日焼けさせたくない
- [ ] 午前中に洗濯物を干してカラッと乾かしたい
- [ ] 将来的に、物件の売却や賃貸を考えている
- [ ] 小さな子供やペットがいて、日中の室温上昇が心配
後悔しないための西向き物件・暑さ対策5選
「ライフスタイル的には西向きが合っているかも。でも、やっぱり夏の暑さが心配…」というあなたへ。大丈夫です、適切な対策を講じれば、西向き物件のデメリットは大幅に軽減できます。ここでは、私が実際に試して効果があったものも含め、具体的な5つの対策をご紹介します。
対策①:遮光・遮熱カーテンやブラインドを設置する
これは最も手軽で効果的な対策の基本です。ただのカーテンではなく、「遮光」機能に加えて「遮熱」機能のあるものを選びましょう。遮熱カーテンは、特殊な繊維や加工によって太陽の熱を反射し、室温の上昇を抑えてくれます。
選び方のポイント
- 遮光等級: 1級遮光が最も光を遮ります。
- 色: 白やアイボリーなどの淡い色は熱を反射しやすく、黒や紺などの濃い色は熱を吸収しやすい傾向があります。遮熱効果を重視するなら淡い色がおすすめです。
- 素材: 生地が厚いほど、空気の層ができて断熱効果が高まります。
対策②:窓に断熱・UVカットフィルムを貼る
カーテンと合わせて行いたいのが、窓ガラス自体への対策です。市販の断熱フィルムやUVカットフィルムを貼ることで、窓から侵入する熱や紫外線を大幅にカットできます。
これは私の失敗談なのですが、以前住んでいた部屋で「カーテンがあるから大丈夫」と油断していたら、窓際の本棚に置いていた雑誌の背表紙が1年で見事に色褪せてしまった経験があります。それ以来、窓フィルムは必須アイテムになりました。透明なタイプも多いので、部屋の明るさや眺望を損なわずに済むのも嬉しいポイントです。
対策③:すだれやグリーンカーテンを活用する
窓の外側で日差しを遮ることも、非常に有効な手段です。日本の昔ながらの知恵である「すだれ」や「よしず」は、見た目にも涼やかで、日差しを和らげながら風を通してくれます。
また、ゴーヤやアサガオなどで「グリーンカーテン」を作るのもおすすめです。植物が葉から水分を蒸散させる際に周囲の熱を奪う「気化熱」の効果で、すだれ以上に涼しく感じられることも。育てる楽しみもあり、一石二鳥の対策と言えるでしょう。
対策④:サーキュレーターで空気を循環させる
エアコンをつけているのに、なぜか足元は寒いのに顔は火照る…そんな経験はありませんか?暖かい空気は上に、冷たい空気は下に溜まる性質があるため、サーキュレーターを使って室内の空気をかき混ぜてあげましょう。
効果的な使い方(冷房時)
- エアコンの風が当たる場所にサーキュレーターを置きます。
- エアコンに背を向けるように、床と平行に風を送ります。
- 部屋全体の空気が循環し、温度ムラが解消されて効率的に涼しくなります。
これにより、エアコンの設定温度を過度に下げなくても快適に過ごせるようになり、結果的に電気代の節約にもつながります。
対策⑤:内見で断熱性能をチェックする
これから物件を探すという方は、ぜひ内見時に断熱性能をチェックしてください。同じ西向きでも、建物の構造や設備によって快適さは全く異なります。
内見チェックポイント
- 窓の種類: 単層ガラスか、断熱性の高いペアガラス(複層ガラス)か?
- サッシの素材: 熱を伝えやすいアルミサッシか、断熱性の高い樹脂サッシか?
- 壁の厚さ: 隣の部屋の音が聞こえるか確認するついでに、壁を軽く叩いてみて、コンクリートの詰まった感じがあるかチェック。
- 換気設備: 24時間換気システムが備わっているか?
特にペアガラスや樹脂サッシが採用されている物件は、結露防止だけでなく断熱性にも優れているため、夏涼しく冬暖かい、快適な住環境が期待できます。
まとめ:「西向きはやめとけ」は万人に当てはまるわけではない
「西向きはやめとけ」という言葉は、確かに夏の暑さや強烈な西日といった、多くの人が不快に感じるであろう事実に基づいています。在宅時間が長く、日当たりの良さを最優先する人にとっては、この言葉は的を射ていると言えるでしょう。しかし、その一方で、家賃の安さや冬の暖かさ、そして何より美しい夕景といった、西向きならではの魅力があることも忘れてはなりません。
結局のところ、住まいに何を求めるかは人それぞれです。あなたのライフスタイルや価値観、そして暑さ対策を工夫する意欲があるかどうか。それらを総合的に考えて、「自分にとってのベスト」を見つけることが何よりも大切なのです。この記事で紹介したメリット・デメリット、そして対策法を参考に、固定観念に縛られず、あなたにぴったりの素敵な住まいを見つけてくださいね。