
「年金とは何だろう?」「国民年金と厚生年金は何が違う?」「自分はいくらもらえる?」「いつから受け取るのがよい?」「税金はいくらかかる?」――年金を調べ始めると、疑問は次々に増えていきます。
制度の名前を知っていても、結局、自分に何が関係し、今何をすればよいのかが見えにくい。この分かりにくさが、年金への不安につながっています。
そこで本記事では、年金制度の基礎だけでなく、次の一連の流れを利用者目線で整理します。
- 年金の仕組みを知る
- 自分の加入状況を確認する
- 将来の受給見込額を調べる
- 受給開始時期を考える
- 税金・社会保険料を含めた手取りを考える
- 必要な請求・変更手続きをする
- 分からないときに公式サービスや窓口を使う
この記事は、単に「年金制度を説明する記事」ではありません。読み終えたときに、自分が次に何を確認し、どこで手続きすればよいかが分かる記事を目指しています。
読む方の状況は、それぞれ違うはずです。
「年金はまだ先の話」という方は、制度の仕組みや加入状況を確認するところから始めてみてください。20代・30代のうちに基本を知っておくと、就職・転職・結婚といった節目で必要な手続きを判断しやすくなります。
「受給まであと数年」という方は、受給額の試算、受給開始時期の選び方、税金の仕組み、請求手続きの流れを中心に読むと、準備が具体的に進みます。
「すでに年金を受け取っている」という方は、税金、確定申告、住所・口座変更などに関する章が参考になります。「今の対応で合っているか」を確認したいときにも活用してください。
また、「調べてもよく分からない」「自分のケースだとどうなるのか」と感じたときに頼りになる相談先も案内しています。日本年金機構、ねんきんネット、公的年金シミュレーター、年金事務所、市区町村窓口を、目的に応じて使い分けられるように整理しました。
最初から順番に読んでも、気になる章から読んでも構いません。まずは次の「記事の歩き方」で、自分の状況に近い章を確認してみてください。
- まずはこの記事の歩き方|知りたい内容から読むこともできます
- 年金とは?制度全体をわかりやすく理解しよう
- まず自分がどの年金に加入しているのか確認しよう
- 年金にはどんな種類がある?
- 年金はいくらもらえる?受給額の考え方
- 自分の年金はいくら?見込額を確認する方法
- 年金はいつからもらえる?
- 年金にかかる税金と手取り
- 人生のイベントごとに見る年金
- 年金の受給手続き
- 困ったらどこを見る?公式サイトと相談窓口の使い分け
- 年金についてよくある質問(FAQ)
- まとめ|年金は「仕組み→自分→金額→時期→税金→手続き」の順で理解すると迷わない
まずはこの記事の歩き方|知りたい内容から読むこともできます

年金について検索したものの、「制度の説明ばかりで、結局自分は何を知ればいいのか分からない」――そんなモヤモヤを抱えていませんか。
年金という言葉はあまりにも広く、仕組みを知りたい人もいれば、受給額だけ急いで確認したい人もいます。この記事は最初から順番に読んでも、気になる場所へジャンプしても理解できるように組み立てました。
まずは、あなたが今いちばん知りたいことがどこにあるのか、地図を眺めるつもりで確認してください。
年金の仕組みだけ知りたい人
「そもそも年金って何?」「国民年金と厚生年金は何が違うの?」という段階の方は、制度の全体像から読み進めるのがおすすめです。
日本の年金は「2階建て」と表現されることが多く、この構造を先につかんでおくと、後の受給額や税金の話がぐっと理解しやすくなります。まずは「年金とは?制度全体を理解しよう」の章へ進んでみてください。
自分がいくらもらえるか知りたい人
多くの人がいちばん気にしているのは、「結局、私はいくらもらえるのか」という点ではないでしょうか。
受給額の考え方を知りたい方は「年金はいくらもらえる?受給額の考え方」へ、自分自身の見込額を具体的に確認したい方は「自分の年金はいくら?見込額を確認する方法」へ進んでください。ねんきんネットや公的年金シミュレーターの使い分けも案内しています。
いつから受給できるか知りたい人
「年金は何歳からもらえるの?」「早くもらう方が得なの?」といった疑問をお持ちなら、「年金はいつからもらえる?」の章を確認してください。
原則65歳という基本に加えて、繰上げ・繰下げ受給のメリットと注意点も整理しました。ここは生活設計によって判断が分かれるところなので、金額だけで慌てて決めないことが大切です。
税金・手続きを知りたい人
受給が近づくと、「年金に税金はかかるの?」「手続きは何をすればいい?」という現実的な悩みが出てきます。
税金の話は「年金にかかる税金と手取り」、実際の申請の流れは「年金の受給手続き」でまとめています。最初から順番に読まなくても構いません。まずは、今抱えている疑問に近い扉から開いていきましょう。
目的別の早見表も用意しました。
| 知りたいこと | 読む章 | 読んだ後にすること |
|---|---|---|
| 年金の基本を知りたい | 年金とは?制度全体を理解しよう | 自分の加入区分を確認する |
| 国民年金と厚生年金の違いを知りたい | 自分がどの年金に加入しているか確認しよう | 給与明細・ねんきんネットを見る |
| いくらもらえるか知りたい | 年金はいくらもらえる? | ねんきんネットで試算する |
| 何歳から受け取るか考えたい | 年金はいつからもらえる? | 65歳・繰上げ・繰下げを比較する |
| 税金や手取りを知りたい | 年金にかかる税金と手取り | 源泉徴収票と他の所得を確認する |
| 就職・転職・結婚時の手続きを知りたい | 人生のイベントごとに見る年金 | 必要な切り替えを行う |
| 受給手続きを知りたい | 年金の受給手続き | 請求書と必要書類を確認する |
| どの公式サービスを使うか迷っている | 公式サイトの使い分け | 目的に合うサービスへ進む |
まず実行したい3つのこと
制度をすべて覚える必要はありません。迷っている方は、次の3つから始めましょう。
- ねんきんネットで加入記録を見る
- 公的年金シミュレーターで概算する
- 記録や手続きに疑問があれば年金事務所を予約する
年金とは?制度全体をわかりやすく理解しよう

年金と聞くと、なんとなく「老後にもらえるお金」というイメージだけが浮かんで、その中身までは説明できないという方が多いのではないでしょうか。
制度は複雑そうに見えますが、骨組みを一つずつ確認すれば、全体像はつかめます。ここでは、国民年金と厚生年金の関係や、公的年金と私的年金の違いを整理します。
まずはこの章で、「年金という仕組みの地図」を頭に入れてしまいましょう。
年金制度とは|現役世代で支え合う社会保険制度
日本の公的年金は、「自分が納めた保険料を自分専用の口座に積み立て、老後に取り崩す制度」ではありません。
現役世代が納める保険料を、その時点の高齢者などへの年金給付に充てる賦課方式を基本とし、国庫負担や積立金も組み合わせて運営されています。世代間・社会全体で生活上のリスクを支える社会保険制度です。
公的年金には、主に次の3つの給付があります。
- 老後の生活を支える老齢年金
- 病気やけがによる障害に備える障害年金
- 加入者などが亡くなった後の家族を支える遺族年金
したがって、若い方にとっても「老後まで関係のない制度」ではありません。
日本の公的年金は「2階建て」
日本の公的年金は、一般に2階建てで説明されます。
| 階層 | 制度 | 主な加入者 |
|---|---|---|
| 2階部分 | 厚生年金 | 会社員、公務員、一定のパート・アルバイトなど |
| 1階部分 | 国民年金(基礎年金) | 日本国内に住む20歳以上60歳未満の人が原則加入 |
会社員や公務員は、国民年金の第2号被保険者であると同時に厚生年金にも加入します。そのため、一定の要件を満たすと、老齢基礎年金に老齢厚生年金が上乗せされます。
国民年金とは
国民年金は、公的年金の土台です。日本国内に住む20歳以上60歳未満の方は、原則として加入します。
被保険者は、働き方などにより次の3つに分かれます。
| 区分 | 主な対象者 | 保険料の納め方 |
|---|---|---|
| 第1号被保険者 | 自営業者、フリーランス、学生、無職の方など | 自分で納付する |
| 第2号被保険者 | 厚生年金に加入する会社員・公務員など | 給与・賞与から厚生年金保険料を負担する |
| 第3号被保険者 | 第2号被保険者に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者 | 個別の国民年金保険料負担はない |
令和8年度(2026年度)の国民年金保険料は月額17,920円です。保険料額は毎年度改定されます。
厚生年金とは
厚生年金は、会社員・公務員や一定の短時間労働者などが加入する制度です。
保険料は、給与を一定の幅で区分した標準報酬月額と、賞与に基づく標準賞与額に保険料率を掛けて計算し、事業主と本人が原則半分ずつ負担します。これを労使折半といいます。
厚生年金は個人ごとの積立預金ではありません。ただし、加入期間や報酬に応じて老齢厚生年金が計算されるため、一般に国民年金のみの場合より老後の年金が厚くなります。また、障害厚生年金や遺族厚生年金の保障もあります。
公的年金と私的年金の違い
公的年金とは別に、老後資金を上乗せする制度・商品があります。
| 種類 | 例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 公的年金 | 国民年金、厚生年金 | 法律に基づく社会保険。老齢・障害・遺族を保障 |
| 私的年金 | iDeCo、企業年金、個人年金保険 | 任意または勤務先制度による上乗せ。税制や受取条件は制度ごとに異なる |
| 資産形成制度 | NISAなど | 年金そのものではなく、投資による資産形成を支援する制度 |
私的年金やNISAは公的年金を置き換えるものではありません。まず公的年金の記録と見込額を確認し、不足すると考える部分を私的年金や貯蓄などで補う順番が分かりやすいでしょう。
まず自分がどの年金に加入しているのか確認しよう

年金の全体像が見えてきたところで、次にやるべきことは「自分がどこに属しているか」を把握することです。
「国民年金と厚生年金の違いは分かった。でも、自分は結局どちらに入っているの?」――ここで手が止まる方は少なくありません。
加入区分を誤って認識すると、保険料の納め方や必要な切り替え手続きを見落とす可能性があります。ここは地味に見えても重要なステップです。以下のパターンから、今の自分に近いものを確認してみてください。
会社員・公務員の場合
勤務先で厚生年金に加入している方は、国民年金の第2号被保険者です。厚生年金保険料は通常、給与・賞与から控除され、勤務先が事業主負担分と合わせて納付します。
まず給与明細の「厚生年金保険料」を確認してください。入社・退社の時期や勤務先の届出状況は、ねんきんネットでも確認できます。
自営業・フリーランスの場合
個人事業のみを営み、厚生年金の適用事業所に雇用されていない方は、原則として国民年金第1号被保険者です。納付書、口座振替、クレジットカード、スマートフォンアプリなどで保険料を納めます。
ただし、法人を設立して役員報酬を受ける場合や、別の勤務先で厚生年金の加入要件を満たす場合などは、厚生年金の対象になり得ます。
パート・アルバイトの場合
パート・アルバイトでも、通常の労働者の所定労働時間・日数の4分の3以上働く場合は、原則として厚生年金・健康保険の対象です。
4分の3未満でも、2026年7月時点では、原則として次の要件を満たすと加入対象になります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 所定内賃金が月額8.8万円以上
- 2か月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない(例外あり)
- 原則として厚生年金被保険者数が51人以上の企業等で働いている
2025年の制度改正により、賃金要件は2026年10月に撤廃予定です。企業規模要件も次のように段階的に縮小・撤廃されます。
| 時期 | 企業規模要件 |
|---|---|
| 2027年9月まで | 51人以上 |
| 2027年10月から | 36人以上 |
| 2029年10月から | 21人以上 |
| 2032年10月から | 11人以上 |
| 2035年10月から | 企業規模要件を撤廃予定 |
※「従業員数」は単純な在籍人数ではなく、原則として企業の厚生年金被保険者数で判定します。任意に適用拡大している事業所など、例外もあります。
配偶者の扶養に入っている場合
厚生年金に加入する配偶者に扶養される20歳以上60歳未満の方は、一定の要件を満たすと第3号被保険者になります。手続きは原則として配偶者の勤務先を通じて行います。
収入要件は原則として年収130万円未満ですが、年齢・障害の有無、同居・別居、今後の収入見込みなどで判断が変わります。また、130万円未満でも、自身の勤務先で厚生年金の加入要件を満たせば第2号被保険者となり、第3号にはなりません。
収入が一時的に増えた場合には、事業主の証明によって扶養を継続できる特例が適用されることもあります。判断に迷うときは、配偶者の勤務先または健康保険の保険者に確認してください。
加入区分を確実に確認する方法
次の順番で確認すると確実です。
- 給与明細の「厚生年金保険料」を見る
- 勤務先の人事・総務担当者に確認する
- ねんきんネットで月別の加入記録を見る
- 記録が実態と違う場合は年金事務所へ相談する
年金にはどんな種類がある?

「年金といえば老後にもらうもの」と思い込んでいませんか。実は、公的年金がカバーしているのは老後の生活だけではありません。
人生には、思いがけない出来事が起こることがあります。病気やけがで生活や仕事に制限が生じたり、家計を支えていた人が亡くなったりすることもあるでしょう。そんなとき、暮らしを下支えする制度の一つが公的年金です。
ここでは、公的年金が持つ「老齢・障害・遺族」という3つの大きな役割を確認します。
老後の生活費を支える「老齢年金」
老齢年金は、原則65歳から生涯受け取る年金です。主に次の2つがあります。
- 国民年金から支給される老齢基礎年金
- 厚生年金の加入実績に応じて支給される老齢厚生年金
厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」による令和6年度末の平均年金月額は、次のとおりです。
- 老齢基礎年金:月額59,521円
- 老齢厚生年金:月額151,142円(老齢基礎年金を含む)
平均額は、自分の受給額を示す数字ではありません。加入期間、報酬、免除・未納、繰上げ・繰下げなどで大きく異なるため、個人の見込額はねんきんネットで確認してください。
参考:厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
病気やけがによる生活上の制限に備える「障害年金」
障害年金は、病気やけがによって法令で定める障害状態になった場合に支給される年金です。身体障害だけでなく、精神疾患や内部疾患なども対象になり得ます。
主な確認項目は次の3つです。
- 初診日がいつか
- 初診日にどの年金制度に加入していたか
- 保険料納付要件と障害状態の要件を満たすか
20歳前に初診日がある場合は保険料納付要件がありませんが、本人所得による支給制限があります。障害者手帳の等級と障害年金の等級は別制度であり、手帳があるだけで自動的に支給されるわけではありません。
参考:日本年金機構「障害年金」
遺された家族を支える「遺族年金」
公的年金の加入者や受給者などが亡くなったとき、一定の遺族に支給されるのが遺族年金です。
- 国民年金から支給される遺族基礎年金
- 厚生年金から支給される遺族厚生年金
遺族基礎年金の主な対象は「子のある配偶者」または「子」です。そのため、子のいない配偶者には遺族基礎年金が支給されないのが原則ですが、遺族厚生年金や寡婦年金、死亡一時金など別の給付に該当する場合があります。
2025年成立の制度改正により、遺族厚生年金は今後見直しが予定されています。実際の受給可否は死亡時期、年齢、家族構成、加入記録などで異なるため、日本年金機構または年金事務所で確認してください。
参考:日本年金機構「遺族年金」
結局、今の自分に関係する年金はどれ?
こうして3つの種類を並べると、どれも自分にはまだ遠い話のように感じるかもしれません。特に20代・30代の方なら、「老後はずっと先だし、今は元気だから自分には関係ない」と考えるのも無理はないでしょう。
しかし、毎月保険料を納めることは、「老齢・障害・遺族」という3つの保障を持つ公的年金制度に参加していることを意味します。老後の生活だけでなく、現役時代の病気・けがや、万が一のときの家族の生活にも関わる制度です。
だからこそ、保険料を払えないときは未納のまま放置せず、免除・猶予制度を利用することが大切です。ここまでで年金の役割が見えてきたら、次は「自分の場合はいくら受け取れるのか」を確認していきましょう。
年金はいくらもらえる?受給額の考え方

いよいよ、多くの方が最も知りたいテーマに入ります。「結局、年金って毎月いくらもらえるの?」――この疑問こそ、年金について調べ始めた人の本音ではないでしょうか。
とはいえ、年金額は年収や働き方、加入期間、保険料の納付状況などによって変わります。「会社員なら一律でいくら」「自営業なら誰でも同じ」という単純な話ではありません。
まずは国民年金と厚生年金の計算の考え方を知り、その後、自分の記録に基づく見込額を確認しましょう。
国民年金はいくらもらえる?
老齢基礎年金は、20歳から60歳までの40年間、保険料をすべて納めた場合に満額となります。
令和8年度の満額は次のとおりです。
| 対象 | 月額 | 年額 |
|---|---|---|
| 1956年4月2日以後生まれ | 70,608円 | 847,300円 |
| 1956年4月1日以前生まれ | 70,408円 | 844,900円 |
未納期間があると、その月は受給資格期間にも年金額にも原則反映されません。一方、保険料免除期間は、免除の種類に応じた割合が年金額に反映されます。学生納付特例・納付猶予期間は受給資格期間には入りますが、追納しない限り年金額には反映されません。
厚生年金はいくらもらえる?
老齢厚生年金の中心となる報酬比例部分は、厚生年金に加入していた期間と、当時の標準報酬月額・標準賞与額などに基づいて計算されます。
そのため、同じ会社員でも次の違いで受給額が変わります。
- 厚生年金の加入月数
- 現役時代の給与・賞与
- 転職、離職、自営業期間の有無
- 育児休業や産前産後休業に関する届出状況
- 繰上げ・繰下げの有無
- 在職老齢年金による支給停止など
「夫婦で月約23万円」というモデル年金は、平均的な標準報酬で40年間働いた夫と、満額の老齢基礎年金を受ける配偶者という一定のモデルです。すべての夫婦に当てはまる平均額ではありません。
令和8年度の標準的なモデル年金額は月額237,279円ですが、自分の見込額は必ず個人記録で確認してください。
受給額が人によって違う理由
「同じ年代なのに、なぜ年金額に差が出るの?」と疑問に思う方もいるでしょう。主な理由は次の3つです。
- 加入期間の長さ:国民年金は、40年間すべて納めた場合に満額となります。未納・免除・猶予の有無で金額が変わります。
- 現役時代の報酬:厚生年金は、加入期間だけでなく標準報酬月額・標準賞与額などが年金額に反映されます。
- 働き方の変化:会社員、自営業、扶養、離職などの期間がどのように組み合わさっているかで、厚生年金の上乗せ部分が変わります。
平均額と自分の年金額が違っていても、それだけで記録が誤っているとは限りません。ただし、勤めていたはずの期間が抜けているなど、記録に疑問があれば年金事務所へ確認してください。
年金額を増やす主な方法
1.免除・猶予期間を追納する
保険料免除、納付猶予、学生納付特例などの承認を受けた期間は、原則10年以内であれば追納できます。
ただし、単なる未納期間は10年追納の対象ではありません。通常は納付期限から2年を過ぎると納められないため、未納に気づいたら早めに年金事務所へ相談してください。
2.国民年金に任意加入する
60歳時点で納付月数が480月に満たない方などは、要件を満たせば60歳以上65歳未満の間に任意加入し、満額に近づけられます。厚生年金加入中の方、老齢基礎年金を繰上げ受給している方などは対象外です。
受給資格期間が足りない一定の方は、65歳以上70歳未満まで特例任意加入できる場合があります。
3.付加年金を利用する
国民年金第1号被保険者や任意加入被保険者は、一定の場合、月額400円の付加保険料を納められます。付加年金の年額は「200円×付加保険料納付月数」です。
国民年金基金加入者や保険料免除中の方などは利用できません。
4.厚生年金の加入期間を延ばす
厚生年金の適用事業所で加入要件を満たして働けば、加入期間と報酬に応じて老齢厚生年金が増えます。70歳未満が厚生年金の被保険者となる原則的な上限です。
5.受給開始を繰り下げる
65歳から受け取らず、66歳以降に繰り下げると、1か月につき0.7%増額されます。ただし、税金・社会保険料、加給年金、健康状態、待機中の生活費なども含めて判断する必要があります。
自分の年金はいくら?見込額を確認する方法

「平均額は分かった。でも、それは他人の話だよね」――そう感じた方もいるでしょう。その感覚は正しいものです。
年金額は一人ひとりの加入記録によって異なるため、平均値だけを眺めても、自分の老後の収入は見えてきません。とはいえ、複雑な計算式を自分で解く必要はありません。国が用意している公式サービスを使えば、自分の記録や条件に応じた見込額を確認できます。
ここでは、ねんきん定期便・ねんきんネット・公的年金シミュレーターの違いと、使う順番を案内します。
ねんきん定期便|まず加入記録を確認する
ねんきん定期便は、毎年誕生月ごろに届きます。確認するポイントは次の3つです。
- 加入期間に抜けがないか
- 国民年金の未納・免除・猶予の表示に誤りがないか
- 標準報酬月額や見込額が想定と大きく違わないか
見込額の表示方法は年齢で異なります。
- 50歳未満:これまでの加入実績に応じた年金額
- 50歳以上60歳未満:現在の加入条件が60歳まで続くと仮定した見込額
- 60歳以上65歳未満:作成時点の加入実績に基づく65歳からの見込額
35歳・45歳・59歳の節目年齢では、原則として全期間の記録を確認できる封書が届きます。
ねんきんネット|自分の記録で詳しく試算する
ねんきんネットでは、次のことができます。
- 月ごとの加入記録を見る
- 国民年金保険料の納付状況を確認する
- 将来の年金見込額を試算する
- 今後の働き方や受給開始年齢を変えて比較する
- ねんきん定期便や各種通知書を確認する
- 一部の届出・申請をオンラインで行う
マイナンバーカードがあれば、マイナポータルから連携して利用できます。ユーザーID方式では、ねんきん定期便に記載されたアクセスキーを使うと即時登録できます。アクセスキーの有効期限は発行後3か月ですが、期限切れでもアクセスキーなしで利用登録を申し込めます。
公的年金シミュレーター|登録なしで概算する
公的年金シミュレーターは、厚生労働省が提供する簡易試算ツールです。
- ID・パスワード不要
- ねんきん定期便の二次元コードを読み込める
- 働き方や受給開始年齢を変えて比較できる
- 2026年4月から障害年金・iDeCoの試算機能も試験運用
ただし、簡易試算であり、実際の年金額と一致するとは限りません。公的年金シミュレーターは、ねんきんネットの個人アカウントへ直接ログインしてデータ連携するサービスではありません。
シミュレーション例|働き方でどう変わる?
「どんな条件を変えて試せばよいの?」という方は、次のように考えてみてください。
- ずっと会社員の場合:今後の年収と退職年齢を変え、厚生年金の加入期間が延びるとどう変わるか確認する
- ずっと自営業の場合:老齢基礎年金を土台に、付加年金、国民年金基金、iDeCoなどの上乗せも別に検討する
- 途中で独立した場合:会社員時代の厚生年金と、独立後の国民年金がどのように組み合わさっているか確認する
- 受給開始が近い場合:65歳、70歳、75歳など、受給開始年齢を変えて年額・月額を比較する
数字が表示されたら、そこで終わりではありません。税金や社会保険料、毎月の生活費も書き出し、「受け取れる額」と「必要な額」を比べると、老後の準備が具体的になります。
おすすめの使う順番
- 公的年金シミュレーターで概算を知る
- ねんきんネットで実際の加入記録を確認する
- 65歳・繰上げ・繰下げの条件を比較する
- 記録漏れや判断に迷う点を年金事務所で相談する
年金はいつからもらえる?

「年金は65歳から」と聞いたことがある方は多いでしょう。実際、それは基本ルールとして正しい情報です。
ただし、公的年金には、65歳を基準に早く受け取る「繰上げ受給」と、遅らせて受け取る「繰下げ受給」もあります。早く受け取れば毎回の年金額は減り、遅らせれば増えるという関係です。
一度繰上げを請求すると原則として取り消せないなど、金額以外にも重要な注意点があります。この章では、受給資格期間から受給開始時期の選び方まで、順番に整理します。
原則65歳から受給
老齢基礎年金・老齢厚生年金は、原則65歳から受け取ります。ただし、自動的に振り込まれるわけではなく、請求手続きが必要です。
老齢基礎年金を受けるには、保険料納付済期間、免除期間、厚生年金加入期間、第3号被保険者期間、合算対象期間などを合わせて、原則10年以上の受給資格期間が必要です。
繰上げ受給|60歳から64歳で受け取る
希望すれば、60歳から64歳の間に繰上げ受給できます。
1962年4月2日以降生まれの方は、1か月繰り上げるごとに0.4%減額されます。
| 受給開始 | 減額率の目安 |
|---|---|
| 60歳 | 24.0% |
| 61歳 | 19.2% |
| 62歳 | 14.4% |
| 63歳 | 9.6% |
| 64歳 | 4.8% |
1962年4月1日以前生まれの方は1か月0.5%、最大30%です。
繰上げの主なメリット
- 65歳前の生活費を確保できる
- 早い時期から年金収入を得られる
繰上げの主な注意点
- 減額率は生涯変わらない
- 一度請求すると原則取り消せない
- 原則として老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に繰り上げる
- 繰上げ後は国民年金の任意加入や追納ができない
- 事後重症による障害年金を請求できなくなるなどの影響がある
- 65歳まで遺族年金との併給に制限がある
持病がある方や障害年金の可能性がある方は、請求前に年金事務所へ相談してください。
繰下げ受給|66歳から75歳で受け取る
65歳から受け取らず、66歳以降に繰り下げると、1か月につき0.7%増額されます。
| 受給開始 | 増額率 |
|---|---|
| 66歳 | 8.4% |
| 67歳 | 16.8% |
| 68歳 | 25.2% |
| 69歳 | 33.6% |
| 70歳 | 42.0% |
| 75歳 | 84.0% |
最大75歳まで繰り下げられるのは、原則として1952年4月2日以後生まれの方などです。それ以前の方は上限が70歳となる場合があります。
老齢基礎年金と老齢厚生年金は、別々に繰り下げることもできます。
繰下げの主なメリット
- 増額された年金を生涯受け取れる
- 長生きによる資金不足への備えになる
繰下げの主な注意点
- 待機期間中は繰り下げる年金を受け取れない
- 加給年金額・振替加算は待機中に支給されず、増額対象にもならない
- 在職老齢年金で支給停止となる部分は、原則として増額対象にならない
- 増額後は所得税、住民税、医療・介護保険料などが増える場合がある
- 障害年金・遺族年金の受給権があると繰下げできない場合がある
繰下げを希望する場合の手続き
老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を繰り下げる場合、65歳時点では原則として年金請求書を提出しません。66歳以降、実際に受け取りたい時期に繰下げ請求を行います。
一方だけを65歳から受け取り、もう一方を繰り下げる場合は、65歳時点で受け取る側の請求と受取方法の確認が必要です。
「何もしなければ自動的に最大75歳まで繰下げになる」と考えず、受け取りたい時期が来たら必ず請求してください。
いつ受け取るかを決めるチェック項目
- 65歳以降も働くか
- 退職金・貯蓄で待機期間を生活できるか
- 住宅ローンや家賃負担があるか
- 健康状態や持病はどうか
- 配偶者の収入・年金はいくらか
- 加給年金額や振替加算の対象か
- 税・社会保険料を引いた手取りはいくらか
- 遺族年金・障害年金との関係はないか
単純な累計受給額だけで決めず、生活の安定性まで含めて比較しましょう。
年金にかかる税金と手取り

「年金をもらえる年齢になったけれど、受け取った全額が手元に残るわけではないの?」
そんな疑問を持ったことはありませんか。老齢年金は原則として税金の計算対象となり、所得や年齢などによっては、住民税や社会保険料も差し引かれます。そのため、生活設計では額面の年金額だけでなく、手取りを考えることが大切です。
なお、障害年金や遺族年金は原則として非課税です。老齢年金とは扱いが異なります。
この章では、老齢年金と税金の関係を、公的年金等控除・源泉徴収・確定申告・私的年金の順に整理していきます。
老齢年金は課税対象、障害・遺族年金は原則非課税
国民年金・厚生年金などの老齢年金は、所得税上「公的年金等に係る雑所得」として課税対象になります。ただし、年金収入の全額に税金がかかるわけではありません。
一方、障害年金と遺族年金は原則として非課税です。
公的年金等に係る雑所得の基本計算
基本的には、次のように計算します。
公的年金等の収入金額 − 公的年金等控除額 = 公的年金等に係る雑所得
公的年金以外の所得が1,000万円以下の場合、収入が一定範囲なら公的年金等控除の最低額は次のとおりです。
- 65歳未満:60万円
- 65歳以上:110万円
例えば65歳以上で、公的年金収入が年200万円、他の所得が1,000万円以下なら、公的年金等に係る雑所得は原則90万円です。
200万円 − 110万円 = 90万円
この90万円から直接税率を掛けるのではありません。他の所得と合算したうえで、基礎控除、社会保険料控除、配偶者控除、医療費控除などを差し引いて税額を計算します。
2026年分の基礎控除に注意
基礎控除は、以前の一律48万円ではありません。
令和8年度税制改正により、令和8年分は本則部分が62万円に引き上げられ、合計所得金額に応じた加算措置もあります。令和8年11月までの源泉徴収事務には直ちに反映せず、公的年金については令和8年12月の支払時に精算される予定です。
税制は改正が続いているため、具体的な税額を計算するときは国税庁の最新情報や確定申告書等作成コーナーを利用してください。
参考:国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」
年金から所得税が源泉徴収される基準
令和8年分は、日本年金機構から支給される老齢年金の年額が次の金額以上の場合、原則として所得税・復興特別所得税の源泉徴収対象です。
- 65歳未満:155万円以上
- 65歳以上:205万円以上
令和7年分までの108万円・158万円から変更されています。
参考:日本年金機構「老齢年金から源泉徴収される所得税の控除を受けるとき」
扶養親族等申告書は誰が提出する?
源泉徴収対象者には、日本年金機構から扶養親族等申告書が送られることがあります。
次のような控除を受ける方は、案内に従って提出してください。
- 配偶者控除・配偶者特別控除
- 扶養控除
- 障害者控除
- 寡婦控除・ひとり親控除など
申告書を出さなくても基礎控除は反映され、税率も変わりませんが、配偶者控除・障害者控除などは反映されず、必要なら確定申告が必要です。該当する配偶者・扶養親族等がおらず、本人も障害者・寡婦等に該当しない場合は、提出不要となることがあります。
確定申告が必要・有利になりやすいケース
公的年金受給者には、次の両方を満たす場合の確定申告不要制度があります。
- 公的年金等の収入金額が400万円以下
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下
ただし、一定の外国年金など、源泉徴収対象外の公的年金等がある場合は適用されないことがあります。
また、所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要な場合があります。
次のような方は申告要否を確認しましょう。
- 給与、事業、不動産、個人年金などの所得がある
- 公的年金等の収入が400万円を超える
- 公的年金等以外の所得が20万円を超える
- 医療費控除、寄附金控除、雑損控除などを受けたい
- 源泉徴収された税金の還付を受けたい
- 外国年金を受け取っている
iDeCoの税金
iDeCoは受け取り方によって所得区分が変わります。
- 年金形式:公的年金等に係る雑所得。公的年金等控除の対象
- 一時金:退職所得。退職所得控除の対象
会社の退職金や企業型DC一時金と受取時期が近い場合、退職所得控除の計算が複雑になることがあります。受取時期を決める前に、運営管理機関、税務署、税理士などへ確認すると安心です。
個人年金保険の税金
保険料負担者と年金受取人が同じ場合、受け取った年金額から、その年金額に対応する払込保険料を差し引いた部分が原則として雑所得になります。公的年金等控除は使えません。
保険料負担者と受取人が異なる場合は、年金受給権に贈与税が関係することがあります。一時金受取では所得区分も変わるため、契約内容を保険会社に確認してください。
参考:国税庁「保険契約者(保険料の負担者)である本人が支払を受ける個人年金」
手取りを考えるときは社会保険料も見る
年金から差し引かれる可能性があるのは所得税だけではありません。
- 個人住民税
- 介護保険料
- 国民健康保険料
- 後期高齢者医療保険料
保険料や住民税は、前年所得、年齢、世帯状況、自治体などで変わります。生活設計では額面の年金額ではなく、税・社会保険料を引いた手取りで考えましょう。
この章のまとめ|受給額ではなく手取りを意識しよう
年金と税金について押さえたいポイントは、次のとおりです。
- 老齢年金は原則として雑所得の課税対象になる
- 障害年金・遺族年金は原則非課税
- 公的年金等控除の後、さらに基礎控除などを差し引いて税額を計算する
- 扶養親族等申告書は、対象となる控除がある方が提出する
- 所得税の確定申告が不要でも、住民税申告が必要な場合がある
- 実際の生活設計では、税・社会保険料を引いた手取りを見る
税制は改正されることがあります。「昨年も同じだったから」と判断せず、受給開始前や確定申告前に最新情報を確認してください。
人生のイベントごとに見る年金

「年金って、老後になってから考えればいいんじゃないの?」
そう思っている方は多いかもしれません。でも実際には、年金との関わりは20歳から始まり、就職・転職・結婚・退職といった人生の節目ごとに、確認すべきことや必要な手続きが変わります。
ふと気づいたら切り替え手続きを忘れていた、知らないうちに未納期間ができていた、という事態は避けたいところです。
この章では、ライフイベント別に「そのとき年金で何をすべきか」を整理します。自分の今の状況に当てはめながら読んでみてください。
20歳になった|国民年金への加入が始まる
日本国内に住む20歳以上60歳未満の方は、厚生年金加入者などを除き、原則として国民年金に加入します。
2019年10月以降は、日本年金機構が原則として加入処理を行い、20歳になってからおおむね2週間以内に次の書類を送ります。
- 国民年金加入のお知らせ
- 基礎年金番号通知書
- 国民年金保険料納付書
- 学生納付特例・免除等の案内
約2週間たっても届かない場合は、市区町村の国民年金窓口または年金事務所で確認してください。
学生で所得要件を満たす場合は、学生納付特例を申請できます。承認期間は受給資格期間に入りますが、追納しない限り老齢基礎年金額には反映されません。申請は原則として年度ごとに必要です。
就職した
厚生年金の適用事業所に就職し、加入要件を満たすと、国民年金第2号被保険者になります。資格取得手続きは勤務先が行います。
入社後は、給与明細とねんきんネットで厚生年金の加入開始月を確認しましょう。学生納付特例や納付猶予期間がある方は、生活に余裕ができた段階で追納を検討できます。追納した保険料は、納付した年の社会保険料控除の対象です。
転職した
退職日の翌日から次の勤務先の厚生年金資格取得日まで空白がある場合は、原則として国民年金第1号被保険者への切り替え手続きが必要です。
手続き先は、住所地の市区町村窓口または年金事務所で、マイナポータルから電子申請できる場合もあります。届出は原則14日以内です。
ただし、保険料は月単位で判定されます。同じ月の途中で国民年金から厚生年金へ移った場合などは、国民年金保険料が結果的に発生しないことがあります。それでも加入記録を正しくつなぐため、空白期間の届出は行ってください。
退職した
60歳未満で退職し、再就職せず、配偶者の扶養にも入らない場合は、国民年金第1号被保険者への切り替えが必要です。
60歳以上で、老齢基礎年金の納付月数が480月に満たない方は、条件を満たせば65歳まで任意加入できます。
65歳が近い方は、次を確認しましょう。
- 受給資格期間が10年以上あるか
- ねんきんネットの見込額
- 65歳から受け取るか、繰下げるか
- 在職老齢年金の影響
- 加給年金額や振替加算の対象か
- 税・社会保険料を引いた手取り
結婚して配偶者の扶養に入った
第3号被保険者になる手続きは、原則として配偶者の勤務先を通じて行います。入籍しただけでは自動的に第3号になるとは限りません。健康保険の扶養認定とあわせて、配偶者の勤務先へ申し出てください。
扶養を外れて第1号になる場合は、自分で市区町村へ種別変更を届け出る必要があります。自身が厚生年金に加入する場合は、勤務先が第2号への手続きを行います。
保険料を払えない
保険料を払えないときは、未納のまま放置せず、免除・納付猶予・学生納付特例を申請してください。
保険料免除
本人・配偶者・世帯主の前年所得などが一定以下の場合、全額、4分の3、半額、4分の1の免除を受けられることがあります。免除期間は受給資格期間に入り、免除割合に応じて老齢基礎年金額にも一部反映されます。
一部免除が承認された場合、残りの保険料を納めないと、その期間は未納扱いになるので注意してください。
納付猶予
20歳以上50歳未満で、本人・配偶者の所得が一定以下の場合に利用できます。猶予期間は受給資格期間に入りますが、追納しない限り年金額には反映されません。
免除・猶予は、申請時点から原則2年1か月前までさかのぼって申請できます。ただし、遅れると障害年金・遺族年金に影響する可能性があるため、早めに申請しましょう。
参考:日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
この章のまとめ|年金は「そのときそのとき」の確認が大切
| ライフイベント | 確認・手続きすること |
|---|---|
| 20歳になった | 国民年金加入のお知らせを確認。学生は学生納付特例を検討 |
| 就職した | 厚生年金の加入開始月を給与明細・ねんきんネットで確認 |
| 転職した | 空白期間があれば国民年金第1号への切り替えを確認 |
| 退職した | 60歳未満なら第1号への切り替え、60歳以上なら任意加入・受給準備を確認 |
| 配偶者の扶養に入った | 配偶者の勤務先を通じて第3号の手続きを確認 |
| 扶養を外れた | 第1号または第2号への切り替えを確認 |
| 保険料を払えない | 未納にせず、免除・猶予・学生納付特例を申請 |
年金は「老後になってから一度だけ考えるもの」ではありません。人生の節目で少し立ち止まり、加入記録を確認することが、将来の受給額と万が一の保障を守ることにつながります。
年金の受給手続き

「年金って、65歳になったら自動的に振り込まれるんじゃないの?」
そう思っている方は少なくありません。ところが実際には、自分で請求手続きをしないと年金の受け取りは始まりません。手続きを忘れたまま長期間が過ぎると、時効によって古い分を受け取れない場合もあります。
難しい手続きではありませんが、「いつ・何が届いて・何を準備して・どこへ提出するか」を事前に把握しておくと、いざというときに慌てずに済みます。
ただし、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を繰り下げる場合は、65歳時点では原則として請求しません。通常受給と繰下げを混同しないよう、この章で流れを確認しておきましょう。
年金は自動的には始まらない
老齢年金は、受給権が発生しても自動的には振り込まれません。自分で年金請求を行う必要があります。
受給開始までの基本的な流れ
ステップ1:年金請求書が届く
原則として、受給開始年齢に到達する約3か月前に、日本年金機構から年金請求書(事前送付用)が届きます。
最終加入記録が共済組合の場合などは、共済組合から送られることがあります。特別支給の老齢厚生年金を受けている方には、65歳の誕生月ごろに、別の形式の請求書が届く場合があります。
ステップ2:受取開始方法を決める
- 65歳から老齢基礎年金・老齢厚生年金を受け取る
- 一方だけ65歳から受け取り、もう一方を繰り下げる
- 両方を繰り下げる
両方を繰り下げる場合、65歳時点では原則として請求書を提出しません。判断に迷う場合は、提出前に年金事務所で確認してください。
ステップ3:必要書類を準備する
一般的には次の書類を確認します。
- 年金請求書
- 本人確認・マイナンバー関係書類
- 本人名義の振込先口座を確認できるもの
- 戸籍・住民票・所得証明書など、個別事情に応じた書類
- 配偶者・子に関する書類
- 雇用保険被保険者番号を確認できる書類など
マイナンバーによる情報連携で、戸籍・住民票・所得証明書などの添付を省略できる場合があります。年金請求書に同封されたチェックリストを優先してください。
ステップ4:請求書を提出する
法律上65歳に達する日は誕生日の前日なので、原則として65歳の誕生日の前日以降に提出できます。請求書の表紙に記載された提出可能日を確認してください。
主な提出先は次のとおりです。
- 厚生年金の加入期間がある方:年金事務所、街角の年金相談センターなど
- 加入期間がすべて国民年金第1号被保険者期間の方:市区町村の国民年金窓口となる場合がある
- 共済組合の加入記録がある方:日本年金機構または共済組合。記録により異なる
郵送できる場合もあります。一定の条件を満たす方には、マイナポータル・ねんきんネットを通じた電子申請も案内されています。
ステップ5:年金証書と振込通知を確認する
請求受付から年金証書・年金決定通知書が届くまでの目安は約1~2か月です。加入記録の再確認が必要な場合などは、さらに時間がかかります。
年金証書が届いてから、通常さらに1~2か月後に受け取りが始まります。請求から初回振込まで、合計2~3か月程度を見込んでおくとよいでしょう。
年金の支払日
年金は、原則として偶数月の15日に、その前2か月分が支払われます。
- 4月支払:2月分・3月分
- 6月支払:4月分・5月分
15日が土日・祝日の場合は、その直前の金融機関営業日に支払われます。初回支払や過去分の精算などは、奇数月に支払われることもあります。
年金請求書が届かない場合
65歳になる約3か月前になっても届かない場合は、次を確認してください。
- 受給資格期間が10年以上あるか
- 日本年金機構に登録された住所が正しいか
- 最終加入先が共済組合ではないか
- 特別支給の老齢厚生年金を受けていないか
マイナンバーと基礎年金番号が結び付いている方は、住民票を異動すれば住所変更届は原則不要です。ただし、マイナンバー未登録、住民票と異なる居所への送付、海外居住、成年後見関係などでは届出が必要です。
請求書が届かない場合は、ねんきんネットだけで判断せず、年金事務所またはねんきんダイヤルへ連絡してください。
よくある手続きミス
請求を長期間放置する
年金を受ける権利には、原則5年の時効があります。請求が遅れると、5年より前の分を受け取れない場合があります。
ただし、繰下げ待機中の請求には別のルールや、70歳以降の繰下げ申出みなし制度があります。単なる手続き忘れと繰下げは同じではないため、遅れた場合は年金事務所へ相談してください。
繰下げ希望なのに65歳請求をする
両方を繰り下げるなら、65歳時点では原則請求しません。65歳からの通常受給と繰下げを混同しないようにしましょう。
振込口座の名義が本人と一致しない
原則として本人名義の口座を指定します。日本年金機構に登録された氏名のフリガナと口座名義が違うと、振込できないことがあります。
加給年金額・振替加算を確認しない
配偶者や子との生計維持関係など、一定の要件を満たすと加給年金額や振替加算が付くことがあります。繰下げとの関係もあるため、該当しそうな方は提出前に確認してください。
この章のまとめ|請求書が届いたら、まず受取方法を確認する
受給手続きで押さえておきたい点は次のとおりです。
- 年金は自動的には始まらず、原則として請求が必要
- 通常は受給開始年齢の約3か月前に請求書が届く
- 65歳から受け取る場合は、原則として誕生日の前日以降に提出する
- 両方の年金を繰り下げる場合は、65歳時点では原則提出しない
- 提出先と必要書類は、加入歴・家族構成によって異なる
- 請求から初回振込までは、通常2~3か月程度を見込む
- 請求忘れには5年の時効が関係するため、放置しない
「届いたらすぐ出す」だけでなく、まず65歳受給・一部繰下げ・両方繰下げのどれを選ぶか確認することが大切です。
困ったらどこを見る?公式サイトと相談窓口の使い分け

「年金のことを調べようとしたら、サイトがいくつもあって、どこを見ればいいか分からなかった」
そういった声は、年金を調べ始めた方からよく聞かれます。日本年金機構、ねんきんネット、公的年金シミュレーター、マイナポータル、さらに市区町村や年金事務所まで、情報と手続きの入口が複数あるからです。
この章では、それぞれを「何のために使うのか」という視点で整理します。目的に合った場所へ迷わずたどり着けるように、この使い分けの地図を活用してください。
日本年金機構の公式サイト|制度を調べる・手続きを確認する
日本年金機構は、公的年金の実務情報を調べる基本サイトです。
向いている用途は次のとおりです。
- 国民年金・厚生年金の制度を調べる
- 老齢・障害・遺族年金の受給要件を確認する
- 保険料や年金額の最新版を見る
- 申請書・届書をダウンロードする
- 年金事務所を探す
- 請求手続きの必要書類を調べる
検索エンジンで調べる場合も、「日本年金機構」と付けて検索し、URLが nenkin.go.jp であることを確認してください。
ねんきんネット|自分の記録を確認する
ねんきんネットは、一般的な制度ではなく「自分の年金」を確認するサービスです。
- 加入記録・納付状況を見る
- 年金見込額を試算する
- 条件を変えて受給額を比較する
- 通知書を確認する
- 一部手続きを電子申請する
勤務先の加入期間が抜けている、標準報酬が実際と違うなどの疑問があれば、給与明細、源泉徴収票、雇用契約書など当時の資料を探し、年金事務所へ相談してください。
公的年金シミュレーター|登録なしで概算する
公的年金シミュレーターは厚生労働省の簡易試算ツールです。
「まず大まかな金額を知りたい」「受給開始年齢を変えて比較したい」という方に向いています。試算結果は確定額ではないため、最終確認にはねんきんネットまたは年金事務所を使いましょう。
マイナポータル|電子申請の入口
マイナポータルからねんきんネットを連携すると、ユーザーIDを別途取得せず利用できます。また、対象となる手続きでは、国民年金の加入・免除、老齢年金請求、扶養親族等申告書などを電子申請できます。
手続きごとに対象条件があるため、画面に表示されない場合は紙または窓口で手続きします。
市区町村窓口が向いているケース
- 国民年金第1号への加入・種別変更
- 国民年金保険料の免除・納付猶予・学生納付特例
- 加入期間がすべて第1号である方の老齢基礎年金請求
- 住民税や国民健康保険料の相談
第3号被保険者になる手続きは、原則として配偶者の勤務先を通じて行います。
年金事務所・街角の年金相談センターが向いているケース
- 年金記録の漏れ・誤り
- 老齢年金の請求
- 繰上げ・繰下げの個別試算
- 加給年金額・振替加算
- 障害年金・遺族年金
- 複数制度や共済記録があるケース
- 請求書の書き方が分からない
相談料はかかりませんが、電話では通話料がかかる場合があります。窓口は事前予約をすると待ち時間を減らせます。
目的別の早見表
| やりたいこと | 使う場所 |
|---|---|
| 制度を調べる | 日本年金機構 |
| 自分の加入記録を見る | ねんきんネット |
| 概算額をすぐ試す | 公的年金シミュレーター |
| 国民年金の加入・免除を申請する | 市区町村、年金事務所、対象ならマイナポータル |
| 老齢年金を請求する | 年金事務所等、条件により市区町村・共済組合・電子申請 |
| 年金記録を訂正したい | 年金事務所 |
| 所得税・確定申告を相談する | 税務署・国税庁 |
| 住民税・国民健康保険料を相談する | 市区町村 |
年金についてよくある質問(FAQ)

「制度の説明を読んでも、自分のケースに当てはまるのかよく分からない」
そういう感覚は、年金を調べているとよく起こります。仕組みは理解できても、「で、自分はどうなの?」という疑問が残るからです。
この章では、多くの方が検索したり、窓口で尋ねたりする質問を集め、できるだけ率直に答えていきます。
国民年金と厚生年金は両方もらえる?
厚生年金の加入期間があり、それぞれの受給要件を満たせば、老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取れます。
会社員期間と自営業期間が混在している場合も、国民年金の納付・第2号・第3号などの実績は老齢基礎年金に、厚生年金加入期間は老齢厚生年金に反映されます。
学生でも年金を払う必要がある?
日本国内に住む20歳以上の学生は、厚生年金加入者などを除き、原則として国民年金に加入します。
所得要件を満たす場合は学生納付特例を申請できます。未納のまま放置するのではなく、必ず申請してください。承認期間は受給資格期間に入りますが、追納しなければ老齢基礎年金額には反映されません。
未納期間があるとどうなる?
主に次の影響があります。
- 老齢年金の受給資格期間に入らない
- 老齢基礎年金額が減る
- 障害年金・遺族年金の納付要件を満たせないことがある
障害年金では、原則として初診日の前日において、初診月の前々月までの加入期間の3分の2以上が納付済み・免除済みであることなどが必要です。65歳未満には、直近1年間に未納がない場合の要件もあります。20歳前初診には保険料納付要件がありません。
未納に気づいたら、納付期限から2年以内か、免除・猶予をさかのぼって申請できる期間かを年金事務所で確認してください。
免除と未納は何が違う?
免除は申請・承認を受けた期間で、受給資格期間に入り、老齢基礎年金額にも一定割合が反映されます。未納は受給資格期間にも年金額にも原則反映されません。
払えないときほど、免除・猶予を申請することが重要です。
年金だけで生活できる?
一律には判断できません。住居費、医療・介護費、世帯人数、地域、保有資産によって必要額が大きく異なるためです。
まず、ねんきんネットの月額見込額から税・社会保険料の概算を引き、毎月の生活費と比較してください。不足が見込まれる場合は、就労継続、繰下げ、iDeCo・NISA、支出の見直しなどを組み合わせて検討します。
年金制度は将来なくなる?
公的年金は法律に基づく社会保障制度で、5年ごとの財政検証や年金額の調整を行いながら運営されています。
突然すべて廃止されると断定する根拠はありませんが、人口・経済・物価・賃金の状況に応じて、保険料、加入対象、給付水準、受給ルールなどが今後も改正される可能性はあります。
若い方も「どうせもらえない」と未納にするのではなく、老齢・障害・遺族の保障として加入記録を守ることが重要です。
65歳を過ぎて請求を忘れたらどうなる?
請求はできますが、原則5年の時効により、古い支給分を受け取れない場合があります。
一方、意図的に繰下げ待機していた場合には、請求時期や年齢に応じて繰下げ受給または本来額での遡及受給を選べる場合があります。自己判断せず、年金事務所へ相談してください。
働きながら年金をもらえる?
受け取れます。ただし、厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受ける場合、賃金・賞与と老齢厚生年金の合計に応じて、一部または全部が支給停止されることがあります。老齢基礎年金は在職老齢年金による支給停止の対象ではありません。
2026年4月から支給停止基準額が引き上げられています。最新額は日本年金機構で確認してください。
年金相談は無料?
年金事務所、市区町村、街角の年金相談センターでは相談料はかかりません。ただし、ナビダイヤルなどの電話相談では通話料がかかる場合があります。
この章のまとめ|疑問は「自分のケース」に置き換えて考える
| 質問 | 要点 |
|---|---|
| 国民年金と厚生年金は両方もらえる? | 加入実績と受給要件に応じて、老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取る |
| 学生でも払う必要がある? | 20歳から原則加入。難しい場合は学生納付特例を申請 |
| 未納期間があるとどうなる? | 受給資格、年金額、障害・遺族年金の納付要件に影響する可能性がある |
| 免除と未納は違う? | 免除は受給資格期間に入り、年金額にも一定割合が反映される |
| 年金だけで生活できる? | 個人の見込額と支出、税・社会保険料を比べて判断する |
| 年金制度はなくなる? | 継続的な制度改正はあり得るため、最新情報と自分の記録を確認する |
| 相談は無料? | 公的窓口の相談料は無料。電話は通話料がかかる場合がある |
制度全体の話だけで考えると難しく感じますが、「自分の加入記録ではどうなるか」に置き換えると、確認すべきことが具体的になります。
まとめ|年金は「仕組み→自分→金額→時期→税金→手続き」の順で理解すると迷わない

「年金って難しそう」という印象は、制度そのものの複雑さだけでなく、どこから読めばよいか分からないことから生まれる場合があります。
制度の仕組みから始まり、加入区分、受給額、受給時期、税金、手続き、公式サイトの使い方まで、この記事では順番に整理してきました。
最後にもう一度、全体の流れを確認しておきましょう。「自分は今どこにいて、次に何をすればよいか」が見えてくるはずです。
- 知る:国民年金は公的年金の土台で、会社員・公務員などには厚生年金が上乗せされます。年金は老後だけでなく、障害・死亡にも備える社会保険です。
- 見る:ねんきん定期便やねんきんネットで、自分の加入期間、納付状況、標準報酬、記録漏れを確認します。
- 試す:公的年金シミュレーターで概算し、ねんきんネットで個人記録に基づく見込額を試算します。
- 決める:60〜75歳のダイヤルから、健康、仕事、貯蓄、家族まで含めて、自分のライフスタイルに合う時期を選びます。
- 手取りを考える:額面だけでなく、そこから差し引かれる税金(所得税・住民税)や社会保険料(介護・国保など)を引いた現実の数字を見つめます。
- 手続きする:人生の節目や65歳の受給時に確実に請求を行います。65歳から受け取る場合は原則として誕生日の前日以降に請求し、両方を繰り下げる場合は65歳時点では原則請求せず、受け取りたい時期に手続きします。
今の状況別・次の一歩
| 今の状況 | 次にすること |
|---|---|
| 加入状況が分からない | ねんきんネットで月別記録を確認する |
| 将来額が分からない | 公的年金シミュレーターで概算し、ねんきんネットで精査する |
| 未納・免除期間がある | 納付、免除・猶予、追納の可否を年金事務所に確認する |
| 転職・退職した | 第1号への切り替えが必要か確認する |
| 扶養に入った・外れた | 配偶者の勤務先または市区町村で種別変更を確認する |
| 受給まで数年 | 受給額、開始年齢、税・手取りを比較する |
| 請求書が届いた | 受取方法と必要書類を確認し、提出前に不明点を相談する |
| 税金が分からない | 源泉徴収票と他の所得を整理し、国税庁・税務署で確認する |
最初の一歩として、まずねんきんネットで自分の加入記録を確認してみてください。制度全体を完璧に暗記するより、自分の記録を正しく知ることが、将来の年金を守る最も実用的な行動です。













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